カウンセリングの効果・意味
カウンセリングには効果がない?
カウンセリングの導入期には、目新しさを感じてモチベーションは高いことも多いです。しかし、10回ほどカウンセリングを行うと、期待していたようには自分が変わっておらず、それを受け止めることも出来ず、カウンセラーのせいにしたい気持ちが沸いてきたりします。あるいは、自分はカウンセリングを受けてもよくならなかったと落ち込んだりします。その時点でカウンセリングをやめてしまうと、カウンセリングを受けてみたけど効果がない、意味がないという体験になります。ネット上に書かれているのは、その段階の人達の情報だと思います。カウンセリングの効果が出始める前にやめてしまうのはとてももったいないことです。では、続けていくために、その段階をどのように通り過ぎていけばいいのでしょうか。
カウンセラーに不満をぶつけよう
カウンセリングの初期段階では、カウンセラーはどんなことを話しても聴いてくれる人だと頭ではわかっていつつも、さすがにカウンセラー個人への不満を直接口にすることはまずいんじゃないかと考えがちです。気持ちはわかりますが、カウンセラーは自分への不満の言葉でさえクライエントに飲み込んでほしいとは思っていません。別に嬉しい気持ちになるわけではないですし、痛いところをつかれることもあるのですが、それでも、できる限り正直な気持ちを話してほしいと思っています。
不満をぶつけるとカウンセラーはどういう反応をするでしょうか。多くのカウンセラーはきっと、「言いづらいことをよく言ってくれましたね」と返すと思います。きっと、言ってよかったという形になるはずです。そこに意味が生まれます。カウンセリングを辞めるかどうか一人で結論を出し、一方的に辞めてしまうという形は、自分の心だけを守ろうとする歪んだコミュニケーションのパターンであり、実はそれこそが生き辛さ、孤立感、虚しさを生み出す原因だったりします。カウンセラーと対話を続けることが、そのパターンから抜け出し、カウンセリングに意味を見出す方法です。勇気のいることですが、チャレンジしてみてください。
カウンセリングによる変化
ドロップアウトの危機を乗り越え、カウンセリングを続けていくとどんな効果があるでしょうか。1つはもう手に入れています。逃げ出さずにカウンセラーと向き合い、関係を維持できたことによって、ほんのわずかですが対人関係に小さな自信がつくのです。そうなると、自分は変わっていけるかもしれないという期待も生まれます。もともとうまくいかないことを相手のせいにしがちだった人が、自分が変わればうまくいくことも増えるのかなと考え始めます。
多くの人は、起きた出来事を客観的事実として捉えられていると感じていると思いますが、歪ませずに事実を認識するというのは実は大変難しいものです。自分がどの部分をどのように受け止めているか、歪んで受け取ってしまっているところはないか、カウンセリングで振り返れば気づきが得られることがあります。
例えば「職場の上司がいつも私のことを無視するんです。もう苦しくてとても耐えられそうにありません」と相談にきた方は、カウンセリングを受けるとどのように変化するのでしょうか。
わかりやすく誇張しますが、カウンセラーが「いつも無視するんですね、いつも」と返したとします。すると、相談者は「いえ、いつも返事をしてくれないというわけじゃなくて・・・」と言いよどむかもしれません。続けてカウンセラーはこう言います。「先ほどは無視と表現されましたが、もしかしたら上司が返事をしないということが多いのではないですか?」
そういうやりとりを続けると、ある時相談者にも少し気づきが生まれたりします。「無視というか黙っているだけっていう見方もできるのかも」と。普段全く会話がないわけではなく、実は相談者が相談者の都合で上司に話しかけてしまっている場合が多いということに気づくかもしれません。私を無視する上司、という見方から、私に返事をしない上司、黙っているだけの上司という風に変化したら、少しだけ辛い気持ちが減るのではないでしょうか。
カウンセリングは続けるもの
カウンセリングは1回で大きな結果が得られるものではなく、積み重ねで効果が得られるものです。そして、体験し続けるものです。例えるなら、水泳に関する本をいくら読んでも泳げるようにならないし、一度水に入ったところで泳げるようにはならないことに似ています。水に入らず、泳ぎ方を教えてくださいと言われてもコーチは困ってしまいますよね。鼻に水が入って苦しくなることもあるでしょう。なんで今更水泳を習っているんだろうと疑問を持つこともあるでしょう。ちょっと泳げるようになったらもうこれで十分かなと辞めたくなることもあるでしょう。だけど、せっかくならもう少し長く泳げるようになりたい、もう少し楽に、もう少し速く。成長する人はそんな風に続けていきます。カウンセリングも同じなんです。効果は、いろんな気持ちを乗り越えてこそ実感できるものなのです。