カウンセリングと相談の違い

カウンセリングと相談の違い

カウンセリングとは何でしょうか。基本的に、カウンセラーがカウンセリングルーム内でクライエントと話をしたら、それはもうカウンセリングなんですけど、そんな説明じゃ誰も納得しませんよね。相談との違いを見ることで、カウンセリングとは何かを浮き彫りにしてみましょう。最後に、カウンセリングに近い言葉をいくつか載せておきますので、参考にしてみてください。

関係の悪化も時には必要

「カウンセリングではアドバイスをしない」ということが相談との違いと言われることが多いですが、それはあまり本質を捉えてはいません。カウンセリングと相談の最たる違いはその関係性にあります。相談では、相談員と相談者の関係が、始まりから終わりまでずっと良い関係のままということはあるかと思います。それは問題ないですし、むしろ相談関係としては望ましいことだと思います。

一方、カウンセリング関係では、一時的に関係が悪化することもしばしばあり、むしろ、関係の悪化が必要な場合さえあります。それは、カウンセリングがうまくいっていないからではなく、クライエントの本当の問題が浮き彫りになってきたという捉え方もできるからです。偽りの姿を脱ぎ捨てたクライエントの第二形態が現れたみたいなものです。人によっては第三形態まであります。ドラゴンボールのフリーザみたいですね。カウンセリングでは、表面的な悩みの解決をターゲットにしているのではなく、端からクライエントが抱えている真の問題を炙り出し、取り組もうとしている感じなのです。

問題の顕在化

相談関係では、そんなことを前提としていませんよね。相談にのる人は、悩みを一緒に解決していきましょう、といった協力者のスタンスをとるだけです。だから、相談者が急に態度を変えて文句を言ってきたりすることに慣れておらず、文句を言い返したり、何も言えなくなったり、相談にのるのが嫌になったりしてしまいます。相談にのる人も第二形態に変身してしまうんですね。こうして、相談の失敗は、相談者のせいにされてしまいます。

一方、カウンセリングは、クライエントの抱えている問題を、カウンセリングルームの外で起きている他人事ととして捉えるのではなく、カウンセラー・クライエントという二者間に顕在化させて、カウンセラーは目の前で起きていること、あるいは当事者として取り扱おうとするのが基本姿勢なんです。カウンセラーがクライエントの問題をぶつけられるのは必然であり、必要なことだと最初から考えているのです。

クライエントは良いところも持っているけれど、歪んだところも持っています。例えば、怒ってしまいがちなクライエントは、カウンセラーにだって当然怒ってしまいがちなんです。こうして、クライエントの抱える問題が、カウンセラーの目の前に現れ始めてからが本格的なセラピーの開始となります。それは、どのセラピーでも言える共通のことだと思います。

問題の直面化

カウンセラーは鏡に例えられることも多いですが、クライエントが自分の良い部分だけを見られる鏡であってはなりません。クライエントが嫌いな自分自身の部分を含めた、そのままの姿を映し出してあげる必要があります。だから、カウンセリングを受けて心が癒されるとか、スッキリするだけということは本来はないんです。カウンセラーはクライエントに現実をつきつけるという厳しい側面も持っています。それをクライエント一人に乗り越えさせるのではなく、カウンセラーも一緒に向き合っていきますよ、というのがカウンセリングなんです。フォローのある厳しさと言うときれいごと過ぎますかね。でも、そこまで考えているので、カウンセリングは継続的に行われることが望ましいと言われているわけです。

シンデレラの話に魔女の鏡が出てきますよね。「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」「シンデレラです」「なんですって!もう一回言ってごらんなさい!」「すみません、シンデレラです」──鏡は嘘をつきません。割られる覚悟で魔女に現実を伝えました。魔女は現実が受け入れられず、鏡を割ってしまいます。鏡は「あなた様です」と嘘をついて、魔女を良い気分にさせておくほうがよかったのでしょうか?

カウンセリングで、クライエントの良い面ばかり伝え返すカウンセラーは、クライエントの第二形態に攻撃されることを恐れているということです。つまり、カウンセラーの自己保身です。それは、クライエントの歪んだものを、外に、社会に、私に出すなというメッセージとしてクライエントに伝わります。しかし、表面的には、「あなたは素晴らしい人よ、そのままでいいのよ」「先生、ありがとうございます。すごく気持ちが楽になりました」というやりとりになるので、クライエントにとってはカウンセリングは良いものと感じられます。全くクライエントのためになっていないのに。なんでもかんでも抗生物質を出して患者さんにありがたがられる医師みたいなものです。

カウンセラーが部屋から出ない理由

カウンセリングにクライエントの抱えている問題を集約させること。これが、相談とは違う、カウンセラーが部屋から出ない理由です。クライエントが日常の意識から自分の心に意識を向けられるようにするため、カウンセリングルームを非日常的な切り離された空間にするのです。相談はどこでもできますが、カウンセリングはカウンセリングルームでしかできないのです。

だから、喫茶店でカウンセリングを行うのは論外なのです。また、マンションの一室ではなくて、待合室のあるオフィスで実施した方がよいのは、カウンセリングルームが非日常、待合室が半日常、外が日常というように、日常と非日常の間に、半日常というクッション的な空間を挟めるからです。

そういった仕組みで成り立っているカウンセリングが、ただの相談とは違うということがなんとなく伝わったでしょうか。カウンセリングを受ける際の心構えとして、あるいは、自分のためになるカウンセラーを探す際の参考にしてみてください。

カウンセリングと他の用語との違い

最後に、カウンセリングと近い言葉をいくつか載せておきますね。相談、コンサルティング、リエゾン、スーパーヴィジョン、教育分析、ガイダンス、心理教育、コーチング、セラピー・・・意外と近い言葉ってあるんですね。

相談

専門家が相談者の悩みを聴いて助言することです。

コンサルティング

コンサルティングは、職種は異なるが立場は対等という関係で、わからない事があった場合に、相手に教える、教わる関係のことを言います。

リエゾン

リエゾンは、職種が異なる者同士が最初から協働して一人の患者に多方面から関わり、わからない部分を補い合うというニュアンスです。

スーパーヴィジョン

スーパーヴィジョンは、心理職同士で、先輩が後輩のケースの指導にあたることです。

教育分析

教育分析は、ケースについてではなく、精神分析の流れをくむ心理職同士で、後輩が自身の課題に向き合い乗り越えていけるように先輩が指導するものです。

ガイダンス

ガイダンスという言葉はそれほど使われませんが、未来志向的な指導というニュアンスです。

心理教育Psycho Education

心理教育はカウンセラーがクライエントやその家族に心理学的な知識を提供することです。

コーチング

コーチングとは・・・なんでしょう?心理学の用語でしょうか?どこから出てきたのでしょう。有名になりましたが、実は臨床心理士になる時の勉強でも、公認心理師になる時の勉強でも出てこなかったです。「部下を思い通りに動かす方法」みたいな本に出てきそうな、経営との結びつきが強い言葉という印象です。

セラピー

具体的な心理療法のこと。書いていて長くなったので、カウンセリングとセラピーの違いに独立させました。

カウンセリング

心理学を背景とした対人援助技術のことです。アセスメントをして、見立てて、セラピーを行う一連の流れ全てのことを言います。