カウンセリングの回数・期間

どのくらいカウンセリングに通えばいいの?

カウンセラーが推奨する、または行えるカウンセリングの回数は、カウンセラーの学習期間や能力と比例すると思っています。根拠のないことを言うと、いろんなところから怒られるかもしれませんが、 同じ感覚の臨床心理士の方もいるからきっと大丈夫。そう信じて、カウンセリングを受けたい人のヒントにはなるかと思うので書いておきます。長々書いたけど、結論の一行だけ読めばいいかも。

カウンセラーの学習期間と比例します

臨床心理士は年単位で考える

臨床心理士の多くは、特別な立場の人以外、カウンセリングが年単位になることを自然なことと捉えています。10回程度でよくなると言っているのは、ブリーフセラピーとか特定の症状の消失をターゲットとする認知行動療法家のような専門家です。それはそれで考え方がしっかりしていればありだとは思っています。それでも、通常は最低半年といった感覚は臨床心理士ならほぼ全員と共有できるのではないかと思います。

カウンセリングには2つのモデルがあります。一つは、悪いところを改善するという考え方で治療モデルと言われます。もう一つは、よりよく生きていこうという考え方の成長モデルです。クライエントがカウンセリングを受け始める時は、カウンセリングに治療モデルを求めています。だから、「だいたいカウンセリングを何回くらい受けたら良くなりますか?」という質問になります。その時は「半年から1年半」と答えたりしています。それ以上長く言うと「そんなにかかるんですか・・・」とモチベーションが下がってしまうから、治療モデルの範囲内でそう伝えます。

ですが、カウンセリングの醍醐味は治療モデルではなく成長モデルの方にあります。だいたい2年くらいで、クライエントの意識は、治療モデルから成長モデルに切り替わり、あとの期間は人それぞれになっていく感じです。長く通っている方の成長は、本当に感動的なんですよ。「自分でもこんな風になるとは思わなかった」というくらいの変化って本当にあるんです。ただ、そうなるには何年もかかる。カウンセラーとしては、よくぞ困難を乗り越えてくれた、人間の力を見せてくれてありがとうといった気持ちです。あなたたちがいるから10年間ここでカウンセリングを続けてこられました。感謝はお互い様です。これからも協力するし、応援しています。

臨床心理士以外のカウンセラーは数回と考える

1年程度で取得できる資格のカウンセラーは、3回~5回、せいぜい10回くらいでカウンセリングは効果が出ると言います。カウンセリングをそのような程度のものと理解しているということです。というかカウンセリングを技法だと思っていて、クライエントと関係を築くものだと捉えていないのだと思います。あるいは10回以上のカウンセリングの手段を持っていないのかもしれません。数回カウンセリングを行って、良い関係のまま終わりたいのかもしれません。「決まった回数はなく、クライエントが自由に受けたいときに受ければいい」ときれいごとを言うかもしれません。臨床心理士となぜこんなにも感覚が違うのでしょうか。

カウンセラーになりたいと思った時、高校を卒業していない場合でも、高卒認定試験を経て、大学に入り、大学院を経て、臨床心理士試験に合格すれば臨床心理士になることができます。年齢制限はありません。当時すでに知名度の高かった臨床心理士への道は開かれているにもかかわらず、1年程度で取れる資格を目指したということは、近道をしようとしたということではないでしょうか。年単位の努力を避けてしまった臨床心理士以外のカウンセラーだからこそ、カウンセリングが年単位になると言うことは自己矛盾を引き起こすので言えず、クライエントにカウンセリングの回数を少なめに言うのかもしれません。

臨床心理士が目指すのは、医師と同じレベルの専門性です。知識量で言えば、いまだ医師には到底及びませんが、それでも6年間心理学に浸かり、自分を批判する目は身につけています。目的を叶えるために、6年以上耐えられる、続けられる力を持っている人でもあります。それは、クライエントとカウンセリングをしていく中で、煮詰まっても諦めず、関係の悪化を乗り越えていこうとする力に結び付いています。クライエントを引き受ける覚悟が臨床心理士とその他の資格の人ではまるで違うんです。それがそのままカウンセリングを勧める回数や期間の違いに現れていると考えています。

公認心理師も年単位で考えるはず

2019年には心理職の国家資格、公認心理師が誕生しました。国家資格ができた以上、心理職は必ずこれを取得しなくてはなりません。臨床心理士よりも、さらに責任が重い資格です。これからは、臨床心理士かどうかはどうでもよくなり、6年間、公認心理師になるために学んだかどうかがカウンセラーを選ぶ基準となっていきます。公認心理師になるための条件は、臨床心理士になる条件とほぼ同じなので、やはり公認心理師も望ましいカウンセリングの回数や期間は、年単位で考えると思います。

金銭的な事情で公認心理師になるのは難しいと言われるかもしれませんが、それならば諦めるべきです。金銭的な事情で、医師になれない人は諦めなくてはならないのと同じです。無資格の医師(?)になんて誰も診てほしくないのと同じです。今後は、今まで以上に、公認心理師以外のカウンセリングを受けることはやめたほうがいいとはっきり言いたいと思います。

カウンセラーの能力と比例します

心理職歴1年のカウンセラーは、2年目にカウンセリングで何が起こるのか知りません。だから、1年以上カウンセリングを続けるとこんな風になりますよ、ということが体験として言えません。必然、クライエントに勧められる回数は少なくなります。

一方、一人のクライエントと10年カウンセリングを続けたことがあれば、体験として、1~2年目ではこんな感じになって、5年目くらいではこんな感じになって、10年経つとこんな考え方や受け止め方ができるようになることもある、と体験として伝えていくこともできます。長くカウンセリングを続けるということはカウンセラーが成長する上でも必須のことです。カウンセラーの成長に伴って、クライエントが成長する力を目にすることも増え、推奨するカウンセリングの回数は次第に延びていき、年単位の答えが多くなってくるわけです。

逆に、ある一定時期を超えてから、カウンセリングの大家になればなるほど、1回でも効果が出ると言い始めます。カウンセリング歴20年あたりが境でしょうか。そう言いだしたら引退した方がよい気がしています。 だって、1回で効果が出るなんて絶対に言えないことなんですよ。2回目のクライエントを見てないのに、どうやって確かめるのでしょう。初回でカウンセラーにいい顔するクライエントなんていっぱいいるのに。でも、それはまだ未知の領域なので、もしかしたらそういうこともあるのかもしれないし、そのあたりで自己を振り返る力が弱くなっているのかもしれないし、なんとも言わないでおきます。

カウンセリングの回数・期間の結論

「どのくらい通えばいいですか?」の答えは、年単位で答えるカウンセラーの方が信用できる、です。