カウンセリングとセラピーの違い

カウンセリングという言葉

「カウンセリングでは、カウンセラーはアドバイスをせず、主に傾聴することによって、クライエントが主体的に意思決定をできるように───」なんて、いまだに来談者中心療法のことだけをカウンセリングと呼んでいるのはいかがなものかと思います。こんなにもカウンセリングという言葉が広まっているのに、そんなに狭い使い方をしていると、一般の人を混乱させてしまいます。医学用語と心理学用語を対比させて、現代のカウンセリングという言葉はどの範囲の使い方が適切か説明します。今日の内容は、心理学の初学者用です。

医学用語の説明

心理学用語と対比させるために、まずは医学用語の説明をします。診察、診断、治療、診療。一般の人がこれらをきれいに使い分けて喋っているのを聞いたことはほとんどありません。ざっくり適当に語感で選んでいることと思います。それぞれ次のような意味です。

診察

医師が患者の病状や病因について観察や質問によって探ること。

診断

医師が患者の病状や病因について特定の判断を下すこと。

治療

医師が患者の病気を治そうとすること。

診療

診察、診断、治療といった一連の流れ全てのこと。

心理学用語の説明

次に、医学用語のどれに相当するのか示しながら、心理学用語の説明をします。

アセスメント

医学用語の診察にあたる言葉。クライエントの心の状態、発達段階、パーソナリティ傾向、問題の外的要因等を、面接や検査によって明らかにすること。

見立て

医学用語の診断にあたる言葉。現在の問題が生じるまでの経緯をストーリー仕立てでまとめ、カウンセリングを行うことによってどういう変化が期待できるか仮説を立てること。

セラピー

医学用語の治療にあたる言葉。具体的なセラピー名としては、認知行動療法、マインドフルネス認知療法、弁証法的心理療法、スキーマ療法、精神分析的心理療法、来談者中心療法、対人関係療法、動機づけ面接法、ACTなどが有名。それぞれが、より細かい複数の心理技法を持っていて、例えば認知行動療法の心理技法には7コラム法、曝露療法等があります。

カウンセリング

アセスメントを行い、見立てて、セラピーを行う一連の流れ全てのこと。

医療行為と心理行為の対応

それらを対応させるとこうなります。

  • 医学用語 – 心理学用語
  • 診察 – アセスメント
  • 診断 – 見立て
  • 治療 – セラピー
  • 診療 – カウンセリング

蛇足ですが、こういうのもあります。

  • ペイシェント(患者) – クライント(来談者)
  • 薬 – 言葉
  • 手術 – 介入

カウンセリングとセラピーの違い

たぶん、こうするとセラピーとカウンセリングという言葉の使い分けができてスッキリするはずです。治療と診療という言葉のわかりづらさと同じですね。現代のカウンセリングという言葉はアセスメント、見立て、セラピーを含む広い意味で使われたほうがよいということです。なので、セラピーという時には、アセスメントと見立てという意味を含まない場合に使うのがよいと思います。「アセスメントして見立てまではスムーズだったけど、セラピーがなかなか思うように進まないんだよね。セラピーがクライエントに合ってないのかな。それとも見立てが違っているのかな。カウンセリングって難しいね」といった感じです。