パーソナリティ障害の種類 DSM-5版

パーソナリティ障害には家族支援が重要です

子供がパーソナリティ障害の場合、保護者にはどんなことができるでしょうか。まずはパーソナリティ障害について理解を深めましょう。優しく愛情を持って接することは大切なことですが、それだけでは足りません。むしろ、それをしたくてもさせてもらえないことも多く、恩を仇で返されている気分になってしまい、我が子にまるで愛情を感じなくなってしまう保護者も多いものです。

家族として、パーソナリティ障害の方に接する時の言葉使いを学んだり、言ったことがどう歪んで受け取られるのか知っておくことは大事です。悪循環に陥って大切な関係が修復不可能なほどに壊れぬよう、パーソナリティ障害の方の苦しさに歩み寄ってみましょう。

パーソナリティ障害とは

パーソナリティ障害は、人格障害の別名です。人格障害という言葉に付随する、性格の悪さや人格的な異常さといった誤解や偏見をなくしていくために、パーソナリティ障害と言い換えられることが主流になりました。対人関係の揉め事に焦点があたることが多く、迷惑な人と捉えられがちですが、パーソナリティ障害はやはり他の精神障害、知的障害、発達障害、気分障害などと同様に心に苦しさを抱えています。物事の捉え方が独特であったり、感情や衝動性のコントロールが難しく、対人関係がうまくいかない場合が多いです。

パーソナリティ障害は、自分らしさの一部にその特徴が組み込まれてしまっているので、より良い状態に変化していくことは簡単なことではありません。しかし、発達障害の症状のような生まれ持った気質ほど変わりにくいものではなく、後天的に身につけてしまった症状なので、時間をかければ徐々に変化していきます。パーソナリティ障害の支援で最も適切なのはカウンセリングであり、逆に、カウンセリングがもっとも効果を発揮するのもパーソナリティ障害に対してではないかと考えています。一緒に取り組んでいきましょう。

パーソナリティ障害の種類

パーソナリティ障害は大きく分けると3群に、細かく分けると10の診断名に分けられます。

奇妙な言動が特徴のパーソナリティ傷害:A群

妄想性パーソナリティ障害

妄想性パーソナリティ障害は、統合失調症や妄想性障害といったいわゆる精神病に近い状態ではあるが、統合失調症ほど人格的な変化はなく、妄想性障害の妄想ほど話が理解できないわけでもない、そんな状態が長年続いていて、その人らしさの一部になってしまっているような場合に診断されることがあるようです。

猜疑心が強いことが最たる特徴なので、猜疑性パーソナリティ障害という呼び方の方が実態に近いです。世の中に信用できる人がいないので、穏やかに安心して過ごせることがほとんどありません。「考えすぎよ」と安心させようとすると、「お前は能天気すぎる」とひどい言葉が返ってきたり「お前も私を陥れようとするのか」という反応をされたりします。

カウンセリングでは、本人の体験している世界を心的現実として理解しながら、実際の現実世界で行動してもおかしくないような対策を一緒に考えていったりします。

スキゾイドパーソナリティ障害

スキゾイドパーソナリティ障害は、他者といることよりも一人でいることを好みます。自分の世界観を持ってはいるものの、それを崩されることを恐れ、他者と共有しないような生活スタイルが長年続いている場合に診断されることがあるようです。一見、自分と他人は関係がない、感情はあまり感じないという姿勢を見せますが、実は自分と他人の感情が混ざりやすく、動揺する自分を出さないように大きく距離をとっているという感じです。 どんな話をしても、「まぁそんな人もいるでしょうね」とどこか達観しているような、他人事のような反応をされることが多いです。

スキゾイドパーソナリティ障害の特徴は、自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder : ASD)と似ていますが、心の仕組みはだいぶ違います。自己判断せず、専門家の意見に耳を傾けましょう。

失調型パーソナリティ障害

失調型パーソナリティ障害は、統合失調症の症状の1つである妄想のような思考を持ってはいるものの、妄想といえるほど訂正不可能でもない、思い込みや考え方の偏りが強いとまでしか言えないようなタイプで、それ以上悪化もすることも軽快することもなく、その状態が数年以上続いていて、もはやその人らしさを形成してしまっているような場合に診断されることがあるようです。

外から入ってくる情報の多さに振り回されてしまったり、混乱しやすいという特徴を持っています。広く人と接するのは苦手なので、行動の指針として占いなどに頼りつつも、それに行動が振り回されてしまうことも多いようです。カウンセラーの言葉が、以前伝えたことと少しでも矛盾していたりすると、失調型パーソナリティ障害の方はひどく動揺することがあります。

激しい感情が特徴のパーソナリティ障害:B群

反社会性パーソナリティ障害

反社会性パーソナリティ障害の方は、自分が他人より得をするためなら、例えそれが犯罪行為であっても、バレなければ問題ないと考えてしまいます。むしろ、バレないやり方を見つけた自分は他人より頭が良いと感じるようです。逆に、ルールを守っている一般の方を、ルールに縛られている臆病な人達だとバカにしています。だから、反社会性パーソナリティ障害の方は、そんな人達から搾取することに罪悪感はありません。

こうした心の動きは、衝動性の制御が苦手であることや、自己愛が欠如しているため、他人との比較の中でしか自己愛を感じられないといった特徴から理解することができます。軽度の知的障害やADHDといった発達障害の要素も重複して持っていたり、愛情のない不適切な養育を受けて育ったという背景が考えられます。

カウンセリングに来ても、カウンセラーをいかに出し抜くかという意識がどうしても抜けきらないようで、心にもない反省の弁を述べたりします。

自己愛性パーソナリティ障害

自己愛性パーソナリティ障害の方は、犯罪にこそ手を出さないものの、圧倒的に他人より自分のことを優先するという特徴を持っています。自分なりのマナーを他人に押し付ける一方、他人から求められるマナーに関しては一切の配慮がありません。

特別扱いされてもいいくらいの能力が自分にはあるのに、それを凡人が理解できないから不当に扱われていると考えているようです。 他人と意見が食い違うと、自分が考えていることは絶対に正しいのに、それを理解できない相手はなんてバカなんだと感じるようです。そのため、独自の理屈で何時間も相手に説教をしたりします。本当に頭が良い人は何時間も同じ話を繰り返さないものだと思うのですが、そういう考え方は自己愛性パーソナリティ障害の方にはありません。

本人に自己愛性パーソナリティ障害の特徴を伝えると、カウンセラーに自己愛性パーソナリティ障害だと決めつけられた!逆にカウンセラーの方が自己愛性パーソナリティ障害だ!と激怒されてしまうので、細心の注意が必要です。

境界性パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害の方は、他人にとって自分は価値がある存在なのか、愛される存在なのか、そのことが全ての行動基準になっている場合が多いようです。そのため、人付き合いは多いのですが、自分一人で何かを行い、それを自分で認めていくといったことができません。常に、自分の行動を人から認めてほしがる一方、人からの承認がないと生きていけない自分には価値がないと考えてしまいます。

その瞬間だけでもいいから愛されたいと思ってしまい、性的に乱れてしまうことも多いようです。愛に満たされる瞬間と愛に枯渇している期間で気分の浮き沈みがかなり激しいという特徴があります。コツコツと何かを身につけて社会の役に立つ自分になろうとか、中身から魅力的な自分になろうという長期的な展望がもてないため、いつまでたっても死にたい気持ちが消えることはありません。向精神薬の過剰摂取や自傷行為などを繰り返してしまうことが多いです。

カウンセリングでは、遅れてきたり、休んだり、特別な要求をしてきたり、それでもカウンセラーに見捨てられないのか試すような行動が見られます。いつも変わらない態度のカウンセラーでは、自分が大切にされているのかわからなくなってしまうからです。カウンセラーが自分の行動で困っているくらいの方が、自分のことを考えてくれていると実感できて嬉しいようです。

演技性パーソナリティ障害

演技性パーソナリティ障害の方は、自分に価値があるかどうかを確認する手段として、自分には性的に魅力があるのかどうかというのを手掛かりにする特徴を持っています。容姿や身に着けるものは、人目を引く派手なものが多くなりがちです。見た目に最もお金をかけているという方も多いです。対人関係では、異性に対する言動と同性に対する言動が大きく異なります。異性との話題は恋愛や性的な話題になりやすく、媚びたり挑発したりして相手からの興味を得ようとします。同性とはファッションや流行のお店という話題になりやすく、常に自分が中心でいられるような話題に持っていきます。地味な同性に対して憧れられることを喜び、相手に容姿的なアドバイスをしたりする関係になったりすることもあります。

このように書くと、どこにでもいる人のように思われるかもしれませんが、演技性パーソナリティ障害の方は、内面の虚しさがかなり強いという特徴を持っています。常に、その場所や人に合わせて生きていて、自分というものがまるでない感じが強く、自分はカメレオンのようだと例える方もいます。どんな景色にも保護色として溶け込めるが、逆に、元の緑色のカメレオンのままでいることができないということのようです。

カウンセリングでは、初めのころは自発的に話しますが、物事を深く考えたことがあまりないからか、次第に「何を話したらいいかわからない」と言い始めます。自分のためのカウンセリングではなく、カウンセラーの求めるカウンセリングを知りたがります。言っておきますが、カウンセラーは、良いカウンセリングとか良いクライエントなんて求めていません。苦しさをともに乗り越えましょう。

強い不安が特徴のパーソナリティ障害:C群

強迫性パーソナリティ障害

強迫性パーソナリティ障害の方は、自分に対しては強迫的という表現で問題ありませんが、他人に対しては強要するという表現の方がしっくりきます。常に、整合性や合理性、効率性を求め、他人の動きがなかなか自分の思い通りにいかずイライラしているタイプが多いようです。

一見、周囲の人に怖がられていますが、内面は小心者であり、失敗することを過度に不安に思っています。複数のやり方を持つといった柔軟性はなく、絶対に人から責められないように完璧に仕事をこなそうとしてしまいます。完璧さが得られない場合には、決断することができないという特徴も持っているため、仕事が進まなくなってしまう場合もあるようです。

カウンセリングでは、カウンセラーの柔軟な考え方を取り入れたいと思いながらも、どうしても受け入れられないといった葛藤した様子がみられます。

回避性パーソナリティ障害

回避性パーソナリティ障害の方は、とにかく自信がなく、ただただ、普通に人とコミュニケーションがとれるようになりたいと言われることが多いです。多くのパーソナリティ障害にみられるような他人に対する攻撃性はほとんどありません。逆に、防御性(?)が高すぎるような障害です。

感情を表すことは、弱みをみせることと同じなので、出会ったばかりの人とフランクなコミュニケーションをとることが苦手です。相手を傷つけないように、自分が傷つかないように慎重に言葉を選ぶため、会話がふくらみません。もしも相手から「人間関係が苦手そうだね」と言われたら、「人間関係が苦手なダメな奴」と否定されたと感じるようです。しかし、一対一の安心した関係になると、豊かな感情を見せるようになります。カウンセリングに来るまでが大変ですが、来てしまったあとは安心して通われる方が多いです。

依存性パーソナリティ障害

依存性パーソナリティ障害の方は、自分には正しい選択をする能力がないと感じていたり、こうしたいとはっきり言えるほどの意思がないと思っていることから、しっかりした他者にいろいろと決めてもらいたいと考えているようです。

カウンセリングに来て自発的に話す点に問題はありませんが、最後はかならず「どうしたらいいでしょうか?」とカウンセラーに質問する形になりやすいです。「まずは今の自分なりに考えてみようよ」とカウンセラーが促すと大変困った表情を浮かべます。「自分で考えろ」とカウンセラーに突き放された、見放された感じがするようです。感じがするどころか、そう言われたという事実になってしまうところがやはり障害らしさと言えます。

大雑把ではありますが、A群の方は、カウンセラーでさえ信用できない敵で、B群の方は、カウンセラーの人間としての価値を下げようとしてくる、C群の方は、カウンセラーに絶対に味方になってほしがるといった特徴があると言えそうです。

他のホームページには書かれていない具体的な特徴や言い回しにしたほうがイメージが膨らむのではないかと思って書いてはみたのですがいかがでしょうか?パーソナリティ障害の方も読まれるため、書き方には配慮したつもりですが、配慮しきれておらずひどい言い回しになっている点があったら申し訳ありません。同じ診断名でも、まるで違うタイプがいたりするので、あくまで参考程度にとどめておいてください。