学習障害 LD

学習障害の種類

医療分野の定義と教育分野の定義が異なります。医療では読む、書く、計算するという能力の障害だけが学習障害と診断されます。医療では、話す、理解する、推論するという能力の障害は、自閉スペクトラム障害やコミュニケーション障害に分類されます。もともと、学習障害の中でも読むことのみの障害をディスレクシアと呼んでいましたが、現在は、読み書き含めての障害をディスレクシアとまとめて呼んでしまうことが多いようです。正しくは、書字障害はディスグラフィアです。読むことに問題はないが、著しく書くことに困難がある人は意外と多く、黒板を書き写す形式の学校の授業で苦労したというエピソードを聴くことがしばしばあります。書くことが苦手なので集中して聴いていると、なんでノートをとらないんだと怒られることがあるらしいです。もしかしたら、大人になって会社で上司や先輩の話にメモをとらない後輩や新入社員がいたら、頭ごなしに怒るのではなく、書くことが苦手なのかもしれないと想像してみることも必要かもしれません。

学習障害は、情報に対する脳の入力、処理、出力のいずれかの機能に障害があると考えられ、決して本人の努力不足が原因ではありません。また、1つの能力の障害だけを見て、頭が悪いと捉えるのは考え方が歪んでいます。残りの部分をしっかりとみていきましょう。

実際に支援するうえでは、学習障害に当てはまるかどうかということより、6つの能力のどの部分に困難さを感じているのかを重視します。苦手分野を特定したら、現在の環境でやりやすく調整できるところはないか、また、これから起こりうる問題を予測して対応を考えたりしていきます。

学習障害のカウンセリング

学習障害の方とのカウンセリングでは、社会で関わっている人達に自分の障害をどう理解してもらい、協力してもらうかが主なテーマになることが多いです。なぜなら、学習障害の方は苦手分野をどうにか避けつつ生きてこられた方が多く、普通に生活したり仕事をしているだけでは、健常者とまるで区別がつかないからです。割と範囲が狭い部分的な障害だからか、学習障害であると診断されたがる人は少ないように思います。障害名を背負わずに、社会でうまくやっていきたいと希望される方が多く、カウンセリングへのモチベーションは比較的高いです。

苦手分野がどうにも避けられなくなった時点で学習障害が明るみに出るため、30歳頃になってからはじめて相談にくるという方も少なくありません。その場合、これまで自分は他に努力することで補ってきた、相談せずに頑張ってきたんだ!という自負が変なプライドを生み出してしまったりしていて、性格が攻撃的になられている方もいらっしゃいます。苦労されてきたお気持ちはわかりますが、単純に、自分にはこういう障害があるので配慮してください!と強く言うのでは、理解されるどころか反発されてしまいます。学習障害を抱えて生きるということはどういうことなのか、理解されない苦しみや湧いてくる理不尽さを、まずはカウンセリングでお話しください。すぐにわかってもらえなくても根気強く説明していけるくらい落ち着いてから、周りの人に伝え始めましょう。