依存症 – ゲーム障害から考える

インターネットゲーム依存症・ゲーム障害

数年前から、インターネット依存、ゲーム依存、スマホ依存、テレビ依存は、まとめてモニター依存症またはディスプレイ依存症と命名されるだろうと勝手に予想していたのですが、はずれました。残念です。ゲーム依存だけが単独で精神疾患名になるようです。

アメリカ精神医学会作成のDSM-5では、インターネットゲーム依存症という名称が仮採用されていますが、まだ正式に精神疾患として認めるには証拠が足りないと結論づけられています。これは日本でいうオンラインゲームに限定したもので、インターネットにつないでいないゲームは含まれません。

一方、世界保健機構(WHO)作成のICD-11では、ゲーム障害という名称で、オンラインゲーム、オフラインゲームともに含まれることになっています。大きな特徴は以下の3点になります。

衝動性の制御困難

ゲームから少しでも離れると、ゲームのことが気になってしまい、やらずにはいられなくなってしまいます。隙あらばやろうとしたり、隠れてやったり、少しだけにしようと思っても、はじめてしまえば長時間(1時間程度ではなく)やり続けてしまいます。やりたくてやっているという雰囲気ではなくなり、切迫感が伴います。

優先順位の入れ替わり

食事や身なりの清潔さを保つことや、仕事や学業、ゲーム以外で関わる人間関係などを後回しにして、ゲームが最優先になります。ゲームにお金をかけるため、生活費を削ることもあります。

悪化の否認

ゲームばかりしていることで、その他の状況が悪化していることには目を向けず、一時的に一定期間やめることもできません。現在の状況が悪化している、苦しいと認めても、ゲームをやめるほうが苦しいと考えてしまいます。

ゲーム自体が悪いわけではない

その他の依存症と同じです。酒、薬、買い物、ギャンブルなど、それらは適度な使用ならば社会的に認められている行為です。ただ、それらとゲームの違いは、低年齢で手が出せるか否かという点にあると思います。ゲーム障害を依存症扱いするのなら、上記4つのものにかかる制限と同様、ゲームも未成年は原則禁止、または親の同伴時のみ可にしなくてはならないと思うのですが、その辺はどうなることやら、制度的に矛盾しそうな気がします。子供がゲームをするときは、必ず親もやらなくてはならない法律ができるかも?

依存症の種類

物質依存(物質使用障害)

精神作用物質が含まれているものを摂取することによる依存です。薬物依存症、アルコール依存症、ニコチン依存症などがあります。摂食障害の過食行動も、経口摂取で依存症に似た状態を示しますが、精神作用物質が含まれていないため、この診断カテゴリーには入れられないのかもしれません。

プロセス依存(嗜癖行動障害)

体に摂取しない、行動面の依存です。ギャンブル依存症の他、ここにゲーム障害(依存症)が加わります。ギャンブルとゲームが併記されることにはかなりの違和感があります。ギャンブルとはゲームをしてお金を得ることを指すのですから、ゲームがギャンブルを含む関係だと思います。いずれはゲーム障害というカテゴリーの中にギャンブル障害という診断名が入るのではないか、と再び勝手に予想しておきます。

実は、買い物依存症は精神疾患の中に正式な診断名としては入っていません。その他の依存症、みたいな扱われ方をしています。おそらく、ギャンブル依存症やゲーム障害で起きるような睡眠や体調面の異常が少なく、対人関係の問題もあまりみられないからだと思います。依存症というより、衝動性が制御できないという問題行動ですね。

関係依存(人への依存)

依存症は、物質依存、プロセス依存、関係依存の3つと言われてきましたが、現在、関係依存は正式な診断カテゴリーとしては存在しません。対人関係にまつわることは、おそらくパーソナリティ障害に集約されていくのではないかと思います。性依存症は、強迫性性行動障害という名称になり、衝動制御の障害群に入れられます。共依存は、二者関係を表す言葉なので、疾患名としてはありません。

アイドル追っかけ依存症とか、ジャニーズ追っかけ依存症、ヴィジュアル系追っかけ依存症なんて無いですけど、依存症の大きな3つの特徴全て満たしているんですが、どうなんでしょう。四六時中、推しのことを考えて、握手券やグッズに多額を支払い、年齢相応の異性関係を育まない・・・。精神疾患ではないけれど、一度、そのような行動が自分にとってどんな意味があるのか、悪化していないか、カウンセリングで振り返ってみるのも悪くないかもしれませんね。

依存症の特徴 その他

ストレス耐性の低下

最初は大きなストレスに対してのみ行っていたことが、次第に、ストレスがほとんどなくても行うようになります。平日のストレスを解消しようと、週末だけ飲酒していた人が、次第にストレスに関係なく隙あらば飲酒するようになるという感じです。

刺激耐性の強化

求める刺激はどんどん強いものになるか、量が増えるか、長時間行うようになります。

離脱症状・禁断症状

依存してしまっている刺激から離れると、せん妄(意識の変容、幻覚、混乱など)や手の震え、発汗、焦燥感などが現れます。

離脱努力の失敗・スリップ

やめようと思っているのにやめられない、あるいは、一度やめたのにまた手を出してしまうことです。依存症再発のことを、通称スリップと言います。カウンセリングでは、何度もスリップをしてしまうクライエントを、治療を放棄しないように支えます。最初は1週間でスリップしてしまった人が、次は1か月でスリップ、次は3か月でスリップ、やっと1年やめられたかと思ったらスリップ・・・の繰り返しを根気強く支えます。

カウンセリングに依存なんかしません

最後に言っておきたいことです。現代のカウンセリングは、週1回以上行うことはほとんどありません。週に1回50分行うカウンセリングに依存など起こりようがありません。1週間の残り167時間10分、カウンセリングのことで頭が一杯になる人なんて聞いたこともありません。自分の問題に向きあうためにカウンセリングに一生懸命通っている人に「カウンセラーに依存してるんじゃないの?」とか心無いことを言うのはやめてください。

絶対にカウンセリングとは認められませんが、例外的に、電話カウンセリングという名称でサービスを提供しているものに依存する人はいます。何分で幾らという支払方式で話を聞いてくれるサービスにはまってしまい、月に数十万円使ってしまうことがあります。繰り返しますが、絶対に、そんなものはカウンセリングではありません。手を出さないようにお願いします。