注意欠如多動性障害 ADHD

ADHDの特徴

もともとは注意欠陥多動性障害と言われていましたが、欠陥という言葉が差別的なニュアンスを含むと考えられ、現在では修正された名称が用いられています。英語では通称ADHDですが、正確にはAD/HDと記載されます。Attention Deficit / Hiperactivity Disorderの略です。注意欠如と多動性の両方を持つとは限らず、どちらか一方だけの障害の場合もあります。じっとしていられないといった多動性がない場合には、Hyperactivityを省いてADDと言われます。勤務時間中はずっと座っていられるが、仕事内容であまりにも不注意によるミスが多い場合など、大人のADDと呼ばれて広まっています。

不注意

不注意という障害は、見逃す、見間違えるといった視覚的な側面や、聞き漏らす、聞き間違えるといった聴覚的な側面、忘れ物が多かったり、スケジュール管理が苦手といった記憶に関する側面、ぶつけてあざを作ったり、物を落としたりといった体の使い方といった側面に影響を与えます。目の前に何かがよぎったり、物音がするなど、ある一つの刺激が五感を刺激すると、そこに注意の大半を持っていかれてしまって、その他の注意が疎かになります。これを注意の転導性(引っ張られやすさ)と言います。2つ同時に気をつけるということが苦手ということなんです。なので、単純に集中力がない、気が散りやすいというわけではなく、一方では呼んでも何しても振り向かないといった集中力を発揮するという特徴を併せ持っていることも矛盾しないのです。

多動性

多動性という障害によって、長時間座っていられず、立ち歩いてしまったり、座っていても、頭や手を動かしたり、体を揺さぶったりしてしまいます。ADHDの人の中には、多動性だけを止めることを意識してじっとしていると、途端に眠気に襲われるといった感じになる人がいるようです。そうしたことから、 ADHDの人に、目を覚ます系の薬を与えて逆に落ち着かせるという治療法が医療では研究されています。常に動いていることで自分を起こし続けているのかもしれませんね。酸素を取り入れるために泳いでいないと死んでしまう一部の魚のようです。もしかしたら、貧乏ゆすりは、自分を起こそうとするADHDの症状かもしれないので、見かけても大目に見てあげましょう。

衝動性

ADHDにはもう一つ、衝動性という特徴があります。湧き上がってくるもので、思いついたら言わずにはいられないといった抑えがきかない状態のことです。ADHDの中になぜIが、つまり衝動性Impulsivity, Impulsivenessが言葉として入っていないのかは不勉強で知らずすみません。卑猥な言葉を言ってしまったり、触ってはいけないものを触ってしまったり、不適切な場面で笑ってしまうようなことがあるようです。

不注意・衝動性・多動性の関係

不注意と多動性と衝動性は、横並びの特徴ではないかもしれません。例えば物音がすると、気になってしまい(不注意)、今すぐ確かめたくなり(衝動性)、見に行ってしまう(多動性)という一連の流れとして理解した方がよい気がします。そう考えると、本人達のすぐに確かめたいという気持ちを、見に行くという行動以外で解消してあげればよいのではないかという対応方法が生まれます。例えば、物音の原因を他の人が確認しに行ってあげたり、持ってこられるものなら本人達に渡してあげることで、確かめたいという気持ちが満たされ、立ち歩かずに済むかもしれません。また、そもそも物音に注意が引っ張られやすい人なら、聞こえないようにヘッドホンやイヤホンをしてみるのもよいかもしれません。「じっと座ってなさい!」なんて言葉は、多動性という障害に対して根性論で接しているようなものです。その結果、居眠りされて頭にきて・・・なんて関係を繰り返すのはお互いのためによくありませんね。カウンセリングでは、本人達の特徴を理解し、一緒に解決策を考えていきたいと思います。