ひきこもりの回復は家族から
家族もひきこもらないで
息子が長いこと家にひきこもっている───
カウンセリングに来て、カウンセラーにそう打ち明けるのはどんなに苦しいでしょう。本当は隠しておきたい話かもしれません。ご家族にとっては、言葉にならないほど大変辛いことと思います。初めのうちは、「そのうち何か見つけて外に出るようになるだろう」と思って見守り、次第に「まさかこんなに長くひきこもるなんて・・・」、「一体いつまでひきこもっているつもりなの・・・」、3年が過ぎ5年が過ぎ、ついに「もうこの子は一生外に出られないんじゃないか」という絶望的な気持ちになってしまい、どうにも打つ手がなくなりカウンセリングにいらっしゃったという方々のお話を数多く聴いてきました。
諦めずに、できることをやっていきましょう。
どこにも相談に行かず、家族もひきこもってしまっては支援の糸口が全くなくなってしまいます。相談にも行ったし、もうやれることは全部やった、そうおっしゃる方は多いです。でも、本当にそうでしょうか?それは、ひきこもっている子供対してできることは全部やった、ということではないでしょうか。何が言いたいかというと、親御さん自身がどのくらい変わりましたか?ということです。言葉遣いや態度、考え方、過去の出来事への捉え方、そういったところに関して、ひきこもっている子供から「お母さん、変わったよね」とか「お父さん、話しやすくなったよね」と言われたでしょうか。相手を変えたければ自分が変わる。時間はかかりますが、カウンセリングを利用してください。カウンセリングルームセンター南では、幾つかの問題行動に対する家族の態度を一緒に見直していきます。
ひきこもりの問題行動
ひきこもりの方に家族は具体的にどのように接すればいいのか、カウンセリングに行って教えてもらえるのか、そこが気になるところだと思います。もちろん一緒に考えますが、どういう対応をすればいいかだけ知りたいということにはお答えできません。ひきこもりの方には問題行動がしばしば見られますが、どの行動にも必ず理由があるのです。それを理解しようとせずに対応してもうまくいくことがないからです。 なので、一応カウンセリングルームセンター南で取り組む方針を下記に書いておきますが、決して家族だけで実行しないでください。これは、あくまでカウンセリングで相談しながら進めていくものです。繰り返しますが、勝手に実行なさらないでください。うまくいくものもうまくいかなくなってしまいます。下記の方法が納得できて、実行したい方は必ずカウンセリングを受けながら進めてください。
昼夜逆転している場合
昼夜逆転については、そのままで問題ありません。体調面の心配をされる方もいますが、ひきこもりの問題は体調面ではなく、心の問題です。規則正しい生活が心の安定を招くことももちろんありますが、ひきこもっている方にとって規則正しい生活ができるようになるのは、心が安定してきた結果です。昼間起きていることの苦しみを想像してあげてください。多くの人が社会に出て働いている時間帯に生産性のない自分が起きて一体何をしていたらいいのでしょうか。まずは、昼間本人が起きて取り組むことを一緒に考えてあげられるようになりましょう。
家族が本人と話したい場合には、家族が昼夜逆転してみることも時には必要かもしれません。
家族と顔を合わせない場合
ひきこもりの方と無理やり顔を合わせようとはしないほうがいいです。逆に、本人が避けているからといって、家族も本人のことを避けるような振る舞いはしないほうがいいです。自然に生活しましょう。
返事がなくても、挨拶は家族からします。声をかけると嫌がるかもしれませんが、ひきこもりの方に必ず答えさせるような質問ではなく、本人がスルーできるような独り言のように家族は話してください。
ひきこもりの方が恐れている一つに不意打ちがあります。家族は、今日こそ何とかして話そうと機会を伺って声をかけますが、本人にしてみたら急になんの準備もない時に話し合おうと言われても戸惑ってしまいます。もし、話しかけるつもりなら、あらかじめ何日の何時頃声をかけるねと伝えておくのがよいと思います。
リビングを占有する場合
ひきこもりの方が家の中心であるリビングを独占している場合、他に問題行動があまりなく、家族が生活しづらいという理由くらいならば、リビングを取り返そうとしないほうがよいと思います。なんでも本人の言いなりになる必要はありませんが、家族が快適さを取り戻そうとする行動は、本人に、「親はやっぱり俺(私)のことより親自身の気持ちを優先するんだな」という感じに受け取られるかもしれません。たまにはリビングにいさせてもらえるくらいの関係を模索しましょう。
金銭要求がある場合
多くのひきこもりケースを見てきた印象ですが、一定額は活動資金として小遣いを渡した方がよいと思います。お金がないと欲求がなくなってしまうからです。本人がひきこもりつつ活動できるように渡す金額の目安は、一概には言えませんが、自宅にいる場合はだいたい3万円が限度だろうと思います。あまり多くのお金を渡すと貯金をはじめるひきこもりの方がいるようで、一定以上貯まり始めると、ひきこもり生活に不自由さが全く感じられなくなってしまいます。ひきこもりの方を不必要なほど不安にしてはいけませんが、働いている一般の方より不安が少なくなってしまうというのはおかしいですよね。もしも小遣いをあげていない家庭があったら、まずは少額から一定額ずつ渡していく方法を考えていきましょう。
一人暮らしの家賃を支払ってあげつつ、生活費を十数万渡しているといった形でひきこもり生活が完成してしまっている場合、すでに与えている金額を減らすことは、ひきこもっている方の逆鱗にふれますので、この記事を読んだからといって途端に減らすのは絶対にやめてください。金銭事情は各家庭ばらばらなので3万円というのはあくまで目安です。3万円以上もらっているひきこもりの方にとっては、都合の悪い内容なので腹が立つと思いますがどうかご容赦ください。
家庭内暴力がある場合
ひきこもりの方に殴られる場合、家族が直前に言った言葉や行動のメモをとっておいてください。まるで自覚無く、家族が本人の気持ちを逆なでしているかもしれません。あとで振り返る際役に立ちます。
暴力に対しては、「やめて」「なんでそんなことをするんだ」と本人を非難するのではなく、「痛い」「怖い」と自分の感覚や気持ちを伝えられるように練習していきます。殴られっぱなしで居続けるのはよくないので、夜中であっても、暴力から離れるために外に出ることをためらわずに実行できるようにもなってもらいます。
理由無く理不尽な暴力を振るわれている場合には、本人のためにも家族のためにも、家族の方が家を出ていかなくてはならない場合もあります。それに関しては、タイミングや手段などがかなり複雑なので、何度もカウンセリング内で話し合ってからの実行となります。
80歳へのカウンセリング?
ひきこもりの方の数は年々増加しています。19~39歳のひきこもりは50万人超、40~64歳のひきこもりは60万人超、合わせて全国推定100万人以上の方がひきこもっているという統計が出ています。ひきこもりが高齢化しているということは、そのご家族の方も高齢になっており、ひきこもりの高齢化に関する問題は、8050問題と言われ社会で考えていかなくてはならない問題となっています。当ルームのカウンセラーはそのようなご家族に比べて若いですが、それでもその道の専門家です。80歳の方にカウンセリングに来ることを薦めるのは大変忍びないのですが、50歳になっても大切な子供のことです、相談に来ることを考えてみませんか?